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契約上のトラブル事例(がけ条例)

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カテゴリ:不動産知識
不動産売買時に出てくる専門用語の一つに「がけ条例」というものがあります。
宗像市や福津市は、山を切り崩して住宅地にしているような場所が多く、臨地との間に高低差が付いてる土地がよくあります。

その高低差が3メートル以上ある場合、この「がけ条例」に抵触する可能性があります。
これに抵触すると、それなりの擁壁補強工事、地盤補強工事、基礎の補強工事などが必要となるため、土地(もしくは中古住宅)を購入しても、後々、余計に費用がかかることがあるのです。

補強工事は、建築基準法に準した工事となるため、勝手に行うことはできません。
建築許可が必要となるので、一般的には建築士に依頼し、指定業者に工事を依頼して行っていくことなります。

となると、費用も結構かかるので、金銭トラブル、裁判沙汰となることも間々あります。

本日はその「がけ条例」について、実際にあったトラブル事例をご紹介します。

紛争の内容


【登場人物】
◉売主業者A
◉仲介(媒介)業者B
◉買主C

①買主Cは、売主Aより、媒介業者Bを通して土地を購入(3,870万円)。
②売買契約書、重要事項説明書には次の記載があった。
ア 本物件において、建築物を建築する際に、建築を依頼した施工業者等に地盤調査、地耐力調査を要請されることがあり、その結果によっては地盤補強工事等が必要となる場合があります。(中略)それらの調査費用、及び地盤補強工事が必要になった場合に発生する費用については、買主負担となります。
イ 本物件は東京都安全条例第6条(がけ条例)の制限を受ける場合があります。
③買主Cは、本件土地上に建築する建物の予算として、媒介業者Bから参考として提示を受けた木造建築とすることを前提に、1,430万円程度を見込んでいたことから、重要プラン事項説明を受けた際に、上記イの「がけ条例」の制限を受ける可能性を媒介業者Bの担当者に確認したところ「大丈夫だろうが正確なことは分からないので、売主業者Aに聞いて欲しい」と回答された。そこで買主Cは、売主業者Aに対し、がけ条例の適用があるかどうかについて質問したところ、売主業者Aは、「仮にがけ条例の適用があっても、問題なく対応可能である」と回答した。
④また、買主Cから地盤改良工事費用について質問を受けた売主業者Aは、「大丈夫だろう(工事は必要ないだろう)」と回答した。
⑤買主Cが一級建築士に本物件上に建築する建物の設計を依頼したところ、次の点が判明した。
ア 本件の地盤が軟弱であるので、地盤補強工事として777万円が必要。
イ 本件土地にはがけ条例が適用されるので木造建物は建築できず、RC造とする必要があり、追加工事費用として833万円が必要。



買主Cの言い分


①重要事項説明の読み合わせの際、がけ条例については問題なく対応可地盤改良工事についても大丈夫だろうと口頭説明を受けた。
②RC造にするための追加工事費633万円と、地盤補強工事に要する777万円、その他、慰謝料、追加設計費用、住宅ローン利息相当額、損害賠償を請求する

売主業者と仲介業者の言い分


 ①契約書及び重要事項説明書に、
ア がけ条例の適用の可能性があること
イ 地盤補強工事等の費用は買主Cの負担とする特約が明記されていること
書面と異なる説明をするわけがない、したがって責任はない。(A,B)
②媒介業者として負う説明義務は、本件土地についてがけ条例適用の可能性がある旨を告知することであり、それで十分であるから説明義務違反はない。(B)

本事例の問題点


①重要事項説明書の説明内容(可能性があることのみの指摘)は、説明として十分なものだったのか。
②重要事項説明書等の内容と異なる口頭説明がされた場合、どうなるのか(どちらが優先されるのか)。

本事例の結末


判決は以下のようになりました。
①売主業者A、仲介業者B両名について、がけ条例の適用に関する説明義務違反(不法行為)が認定され、建物追加工事費用分の633万円全額のほか、慰謝料150万円や弁護士費用の一部等も損害として認められた結果、総額1000万円強の支払いが命じられた。
②さらに売主業者については、①とは別に、瑕疵担保(契約不適合責任)に基づく損害賠償として地盤補強工事費用の750万円の支払いが命じられた。

【理由】
(1)がけ条例の適用の有無について、十分な説明が尽くされたものとは認め難い。
(2)よって、建築費用に全く影響しないと誤解を生じさせるものであったと言わざるを得ない
(3)「大丈夫だろう」という回答や、参考プランの中の「地盤改良費不要」という文言により、当初プランの1,430万円の範囲内で建築できるものと受け取られても仕方がない

本事例による考察


上記の通り、業者にとってはなかなか厳しい判決が出たようです。
特約内では「地盤補強工事が必要となる場合がある」「必要になった場合の費用は買主が負担する」と明記されていても、口頭による説明であたかも「必要ない」かのうような説明がなされていた場合は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)は免れない、ということです。
ただ、買主の視点に立った場合、土地を購入して、追加の費用が1500万円以上かかることになったとすれば、それこそ大問題、建築行為そのものに直接影響を及ぼす事態です。
土地を売却する場合、地盤調査は売主が任意で行うものですが、その費用はまちまちです。
簡単な調査であれば数十万円、範囲や程度によって金額に差が出てきます。
ただ、この事例の場合は地盤調査の結果として地盤補強工事が必要となりました。
地盤補強工事に加え、がけ条例に抵触しないための工事も、となると、土の入れ替えや水抜き、土留め、擁壁工事と、様々な工事が必要となります。
宗像市や福津市では、80坪ぐらいの更地であれば、1000万円〜1500万円ぐらいが価格帯としては多くなりますが、その費用と同じぐらいの金額が「売るために」かかることになります。
当然、売主としては躊躇しますよね。
単純に坪単価が倍近くになることもありますので、売りづらくなります(というか売れません)。
もともと建物が建っていたような土地であれば地盤も硬くなってますので、そのような心配はほぼありませんが、建物がこれまでに建ったことのない土地や、田んぼだった土地などは、地盤改良工事が必要となることが間々あります。
そのような土地は、そもそもの「単価」が安いことが多いので、購入者側としても注意が必要ですね。
せっかく建築プランまで立てて、銀行融資も申し込んでるのに裁判沙汰、なんてことになると、お金には替えられない損害が発生してしまいます。
重要事項説明や契約内容、特約の説明を受ける際、専門用語がよく出てきます。
慣れないとなかなか理解できないことでもあるので、分からない時や不安がある場合は躊躇せず質問し、タラレバを想定して、対策を念入りに打ち合わせるようにしておきましょう




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